カレンダーや暦(こよみ)を詳しく見ていると、「大犯土(おおづち)」「小犯土(こづち)」という記載を見つけることがあります。
文字を見るからに「土を犯す」と書かれており、何やら不穏な空気が漂っています。「土用(どよう)」に土いじりをしてはいけないという話は有名ですが、実はこの「犯土(ぼんど・つち)」もまた、土に関する重要な禁忌(タブー)が含まれる期間なのです。
「大犯土の期間に草むしりをしてしまったけれど大丈夫?」
「引っ越しの日取りが小犯土と重なっている」
「そもそも土用と何が違うの?」
そんな疑問や不安を持つ方のために、この記事では「犯土」のすべてを網羅的に解説します。
家庭菜園やガーデニングを楽しみたい方から、マイホームの建築、引っ越しを控えている方まで、知っておくべき「土の神様」との付き合い方を学びましょう。
1. 犯土(ぼんど・つち)とは?大犯土と小犯土の基礎知識
まずは、あまり聞き馴染みのない「犯土」という言葉の意味と、その種類について解説します。
犯土の意味:「土の力が暴走する日」
犯土(ぼんど、または「つち」)とは、日本の暦注(れきちゅう)の一つである「選日(せんじつ)」に含まれる期間のことです。
この期間は、「土公神(どくじん・つちぎみ)」という土を司る神様が、地中に潜って支配するとされています。
土公神が地中にいる間に土を掘り返したり、穴を開けたりすることは、神様の頭にクワを打ち込むようなものであり、大変失礼で危険な行為とみなされました。
そのため、古くから「土に関する作業を一切慎むべき期間」として恐れられてきたのです。
「大犯土」と「小犯土」の違いと期間
犯土には「大」と「小」の2種類があり、これらはセットで巡ってきます。それぞれの期間は干支(えと)によって決まっています。
- 大犯土(おおづち):
庚午(かのえうま)の日から、丙子(ひのえね)の日までの7日間。 - 間日(まび・かんにち):
大犯土と小犯土の間にある丁丑(ひのとうし)の日(1日だけ)。この日は土を触っても良いとされる休息日です。 - 小犯土(こづち):
戊寅(つちのえとら)の日から、甲申(きのえさる)の日までの7日間。
つまり、大犯土(7日間)+間日(1日)+小犯土(7日間)=合計15日間が、土を警戒すべき期間のワンセットとなります。
このサイクルが2ヶ月に1回程度巡ってくるため、意外と頻繁に訪れるのが犯土の特徴です。
2. 大犯土・小犯土に「やってはいけないこと」
では、具体的にどのような行為がNGとされるのでしょうか。現代の生活に当てはめて解説します。
1. 土木工事・基礎工事(穴掘り)
最も避けるべきなのが、地面に穴を掘る行為です。
家の基礎工事、井戸掘り、庭の池作りなど、深く土を掘り返す作業は大凶とされます。「土の神様の怒りに触れ、工事中の事故や、完成後の家運衰退を招く」と言われています。
2. 地鎮祭・上棟式
建築に関する儀式も避けるべきです。地鎮祭は「土地の神様を鎮める」儀式ですが、神様が気が立っている(あるいは地中にいる)時期に行うのは逆効果と考えるのが一般的です。
3. 造園・植樹・伐採
庭木の植え替えや、大きな木の伐採も「土を動かす」行為に含まれます。
植物は土に根を張るもの。犯土の期間に植えた木は根付かずに枯れやすい、あるいは伐採すると怪我をしやすいといった言い伝えがあります。
4. 柱建て・塀の設置
カーポートの設置や、フェンスの支柱を埋める作業も、地面に穴を開けるためNG行為に含まれます。
3. 【徹底検証】大犯土・小犯土の「草むしり」はOK?NG?
検索キーワードでも非常に多いのが、「草むしり(雑草取り)」についての悩みです。
雑草は待ってくれません。犯土の期間中でも草むしりをしていいのか、詳しく掘り下げます。
基本ルール:根っこから抜くのはNG
厳密な暦の解釈で言えば、「草むしり」も避けるべきです。
草を根っこから引き抜く際、どうしても土が動きます。ミミズなどの地中の虫を傷つける可能性もあります。これは「土を犯す」行為とみなされます。
妥協案:地上部を「刈る」ならOKとする説
しかし、15日間も庭を放置すれば雑草だらけになってしまいます。
そこで、現代的な解釈や妥協案として、以下の方法は「セーフ(許容範囲)」とされることが多いです。
- 鎌やハサミで地上部だけ切る:
土を掘り返さず、表面に出ている草をカットするだけなら、土公神を刺激しないと考えます。 - 除草剤の散布(※注意あり):
土を動かさない点ではOKですが、「土を汚す」という意味で嫌う考え方もあります。液体タイプをサッとかける程度なら許容範囲でしょう。
結論:大犯土・小犯土の期間は、根こそぎ抜く本格的な除草は避け、目立つ部分をカットする程度に留めるのが無難です。
4. 犯土の「引っ越し」は危険?
「土を掘るわけではないけれど、引っ越しはどうなの?」という疑問も多くあります。
引っ越しは「土につく」行為
昔の考え方では、住居を移ることは「その土地の土になる」「地に足を着ける」ことと同義でした。
そのため、大犯土・小犯土の期間中の引っ越しは、土の気が安定していないため、新生活が根付かない(安定しない)とされ、凶方位への移動と同じくらい嫌がられる傾向にあります。
現代における判断
マンションの2階以上への引っ越しなど、直接「土」に触れない場合は気にしなくて良いという説もあります。
しかし、一戸建てへの入居や、新築への引っ越しの場合は、やはり避けたほうが精神衛生的にも良いでしょう。「入居してすぐにトラブルが続くと、犯土のせいだと思ってしまう」という心理的なマイナスを防ぐためです。
5. 「犯土」と「土用」の違いとは?
「土を触ってはいけない」と言えば「土用(どよう)」が有名ですが、犯土とは何が違うのでしょうか?表で比較してみましょう。
| 項目 | 犯土(大犯土・小犯土) | 土用(春・夏・秋・冬) |
|---|---|---|
| 決まり方 | 日の干支(60日周期)で決まる | 季節(二十四節気)で決まる |
| 頻度 | 2ヶ月に1回程度 | 年に4回(各18日間) |
| 神様の状態 | 土公神が地中にいる | 土公神が地上を支配する |
| 禁止事項 | 土いじり全般、伐採 | 土いじり、新しいこと、旅行 |
| 強さ | 選日として局所的に強い | 季節の変わり目として体調面も含め注意 |
ポイント:
どちらも「土いじりNG」は共通していますが、由来となるサイクルが異なります。
もし「土用」と「犯土」が重なってしまった日は、「ダブルで土いじりNG」となるため、絶対に作業を避けるべき日(特異日)となります。
6. 2026年(令和8年)以降の犯土の調べ方
犯土は干支で決まるため、カレンダーの「日の干支」を見れば自分で計算することができます。
計画を立てる際は、以下の法則をメモしておくと便利です。
犯土の計算ルール
【大犯土(7日間)】
開始:庚午(かのえうま)
〜
終了:丙子(ひのえね)
【間日(1日・休息日)】
丁丑(ひのとうし)
※この日は作業OK!
【小犯土(7日間)】
開始:戊寅(つちのえとら)
〜
終了:甲申(きのえさる)
市販の暦(高島暦など)や、スマホの「六曜・干支カレンダー」アプリを使うと、「庚午」などの干支がすぐに分かります。「庚午(かのえうま)」を見つけたら、「今日から大犯土が始まったな」と判断してください。
7. どうしても作業が必要な時の対処法
工期の遅れや、急な引っ越しなど、どうしても大犯土・小犯土の期間に作業をしなければならないこともあるでしょう。
そんな時の「穢れ払い(けがればらい)」や対処法をご紹介します。
「間日(まび)」を活用する
前述の通り、大犯土と小犯土の間には、1日だけ「丁丑(ひのとうし)」という日があります。
この日は犯土の影響を受けない「間日」です。どうしても作業が必要な場合、この1日だけで終わる作業(植木の植え替えなど)であれば、この日を狙って行いましょう。
作業前の「お清め」を行う
期間中に作業を避けられない場合は、以下の手順で簡易的なお清めを行います。
- 作業をする土地の四隅(北東・南東・南西・北西)に、粗塩(あらじお)とお酒(清酒)を撒きます。
- その土地の中心に向かって手を合わせ、「工事をさせていただきます、驚かせて申し訳ありません」と心の中で土公神に許しを請います。
- 作業はできるだけ静かに、短時間で済ませます。
これはあくまで「許しを請う」儀式であり、完全に凶作用を消せるわけではありませんが、何もしないよりは神様への礼儀として行うべきです。
「着工日」をずらす
長期の工事の場合、「掘り始め(着工)」さえ犯土を避ければ、期間中に作業を継続しても良いという考え方があります。
例えば、犯土に入る前日に少しだけクワを入れて土を動かしておき、「工事はすでに始まっている」という状態にしておくことで、禁忌を回避するテクニックです(「鍬入れ(くわいれ)」と言います)。
まとめ:大犯土・小犯土は「大地への感謝」を思い出す期間
犯土について詳しく解説してきました。最後に重要なポイントをまとめます。
- 犯土とは:土の神様(土公神)が地中にいるため、土いじりをしてはいけない期間。
- 大犯土・小犯土:それぞれ7日間あり、間に1日の休み(間日)がある。合計15日間続く。
- 禁止事項:穴掘り、基礎工事、地鎮祭、植樹、伐採、本格的な草むしり。
- 引っ越し:新しい土地に根付くという意味で、避けたほうが無難。
- 土用との違い:季節由来か干支由来かの違い。意味合いは似ている。
「こんなに禁止事項が多くては生活できない!」と思われるかもしれません。
しかし、これらの暦注は、古くからの「自然への畏敬の念」から生まれたものです。
普段、私たちは当たり前のように土を踏み、掘り返し、恵みを得ています。2ヶ月に一度の「犯土」の期間は、「今は土を休ませる時期だ」「大地の神様に静かに過ごしてもらおう」と、自然に対して謙虚になるための期間だと捉えてみてはいかがでしょうか。
無理な工事や造園は避け、プランを練ったり道具の手入れをしたりする時間に充てる。そうすることで、犯土明けの作業がよりスムーズに進むはずです。

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