新しい年を迎えるにあたり、暦(こよみ)の上で縁起が良いとされる日を気にする方は多いのではないでしょうか。特に2026年は、非常に珍しく、そして強力な開運日が元日にやってきます。
それが「初亥(はつい)の日」です。
「亥の日(いのひ)」は十二支の亥にあたる日で、12日に一度巡ってきますが、その年の一番最初の亥の日を「初亥」と呼びます。通常は1月のどこかに訪れるものですが、2026年はなんと1月1日(元日)が初亥の日にあたります。
初亥の日はその年最初の亥の日のことを指しますが、場合によっては亥の子の日である、11月最初の亥の日を初亥の日と呼ぶ場合もあります。
初詣と合わせて、強力な守護神「摩利支天(まりしてん)」様のご利益をいただける絶好のチャンスです。しかし、実は「初亥」にはもう一つ、11月に行われる行事としての側面もあり、少し混乱しやすい部分でもあります。
この記事では、2026年の初亥の日の詳細、摩利支天様との深い関係、そして11月の「亥の子の日」との違いについて、スピリチュアルな観点も含めて詳しく解説していきます。
初亥(はつい)の日とは?その意味と由来
まず、「初亥の日」の基本的な意味について解説します。
その年、最初の亥の日
暦には「子・丑・寅…」と十二支が毎日割り当てられています。12日で一周するため、月に2回から3回ほど「亥の日」が巡ってきます。
このうち、新しい年が明けて一番最初に訪れる亥の日を「初亥(はつい)」と呼びます。
昔から、亥の日は「多産」や「無病息災」を象徴する日とされてきました。イノシシ(亥)は一度に多くの子を産むことから子孫繁栄の象徴であり、またその猛進する姿から勇気や決断力の象徴ともされています。
江戸時代から続く「初亥」の賑わい
初亥の日は、単なる暦上の区切りというだけでなく、古くから信仰の対象と結びついてきました。特に有名なのが「摩利支天(まりしてん)」への参拝です。
江戸時代の文献や記録を見ると、初亥の日には多くの人々が摩利支天を祀る寺社へ足を運び、参拝者や「講中(こうじゅう)」と呼ばれる信仰集団の人々で大変な賑わいを見せていたことが分かります。この日は特別な縁日として、露店が出たり、特別な祈祷が行われたりするお祭り騒ぎの日でもありました。
2026年の初亥の日は「1月1日」!元日と重なる奇跡
さて、注目の2026年の日付です。
2026年(令和8年)の初亥の日は、1月1日です。
これは暦の巡り合わせによるもので、元日(1月1日)がいきなり「亥の日」でスタートすることになります。これはスピリチュアルな観点からも、非常にエネルギーの強いスタートダッシュが切れる年だと言えるでしょう。
初詣と初亥詣(はついもうで)のダブルご利益
通常、初詣は地元の氏神様や有名な神社へ行かれる方が多いと思いますが、2026年に限っては「摩利支天様が祀られている寺社」を初詣のコースに組み込むことを強くおすすめします。
元日の「初日の出」のエネルギーと、その年最初の「初亥」のエネルギーが重なることで、その年の「厄除け」や「勝負運」が格段に高まると考えられます。特に、2026年に新しい事業を始める方、受験生、スポーツの試合を控えている方にとっては、見逃せない吉日となります。
なぜ亥の日に摩利支天を祀るのか?
「初亥の日には摩利支天」と言われますが、なぜ他の神様ではなく摩利支天なのでしょうか?また、なぜイノシシなのでしょうか?その深い結びつきをご紹介します。
摩利支天様の御使は猪(イノシシ)
神社やお寺に行くと、神様のお使いである動物(神使・眷属)の像を見かけることがあります。稲荷神社の狐、春日大社の鹿などが有名ですが、摩利支天様の御使(おつかい)は「猪(イノシシ)」です。
摩利支天の仏像や描かれた図像を見ると、多くの顔や腕を持つ姿で描かれることが多いですが、その多くがイノシシの背に乗っている姿をしています。あるいは、複数のイノシシが摩利支天の乗る車を引いている姿で表現されることもあります。
イノシシが象徴するもの
なぜイノシシが選ばれたのかについては、以下の理由が挙げられます。
- 速さと敏捷性: イノシシは山野を駆け巡るスピードとパワーを持っています。これが摩利支天の「素早く敵をかわす」「目にも留まらぬ速さ」を象徴しています。
- 勇猛さと生命力: 「猪突猛進」という言葉があるように、イノシシは恐れを知らず突き進む勇猛さを持っています。また、強い生命力の象徴でもあり、戦いの神である摩利支天のイメージと合致しました。
- 傷つけられない象徴: 素早く動き回るイノシシに乗ることで、摩利支天自身も敵から捉えられにくく、傷つけられない(守られる)存在であることを示しています。
このように、摩利支天とイノシシは切っても切り離せない関係にあります。そのため、イノシシの日である「亥の日」は、摩利支天様と最も繋がりやすい日とされ、「亥の日参り」という風習が定着しました。
摩利支天様のご利益と歴史
ここで改めて、摩利支天様がどのような神様なのか、その凄まじいご利益について掘り下げてみましょう。
陽炎(かげろう)の化身
摩利支天(まりしてん)は、元々はインドで生まれた女神です。サンスクリット語では「Marici(マリーチ)」と呼ばれ、その名の意味は「太陽光線」や「陽炎(かげろう)」です。
太陽の光や陽炎には実体がありません。目に見えるけれど、手で掴むことはできませんし、刀で斬ることも、弓で射ることもできません。また、太陽を背にすれば、相手は眩しくてこちらの姿を見ることができません。
この「実体がなく、傷つけられない」「姿を隠すことができる」という性質から、摩利支天は「護身除災」の最強の守護神として信仰されるようになりました。
武士たちが熱狂した「勝利の神」
日本に伝わると、中世以降、多くの武士たちが摩利支天を熱心に信仰しました。
戦場において「敵から姿を隠す」「矢が当たらない」「不意打ちを避ける」というのは、生死を分ける重要な要素です。
特に有名なのが、加賀百万石の礎を築いた戦国武将・前田利家です。彼は摩利支天を兜の中に納めて出陣したと言われています。「摩利支天の加護があれば、決して負けることはない」という強い信念が、戦国乱世を生き抜く心の支えとなっていたのです。
また、剣豪たちの間でも信仰されました。「彼を知り己を知れば百戦危うからず」の境地に至るための精神的な支柱として、道場に摩利支天が祀られていることも少なくありません。
現代におけるご利益:最強の厄除けと開運
現代においては、命のやり取りをする戦場に行くことはありませんが、摩利支天のご利益は形を変えて私たちの生活を支えてくれます。
- 護身除災: 事故や災害、他人からの悪意や嫉妬など、見えない災厄から身を隠し、守ってくれる。
- 必勝祈願: 受験、スポーツ、コンペ、商談など、ここ一番の勝負所で実力を発揮し、勝利へ導く。
- 開運招福: 障害を取り除き、運を開く。
古くからの伝承に「摩利支天を知りその名を念ずる者は、如何なる事象からも害されること無し」という言葉があります。ただその名を唱え、信じるだけで強力なバリアを張ってくれる、非常に頼もしい神様なのです。
もう一つの「初亥」?11月の亥の子の日との違い
「初亥」について調べると、もう一つ別の時期が出てくることがあります。それが11月(旧暦10月)の亥の日です。
ここが少しややこしい点なので、整理しておきましょう。
1. その年最初の亥の日(1月)
これまで解説してきた通り、カレンダー上で年が明けて最初にくる亥の日です。2026年であれば1月1日がこれに当たります。「初亥(はつい)」と呼びます。
2. その月最初の亥の日、特に11月(亥の月)
旧暦では10月、新暦では11月を「亥の月」と呼びます。この亥の月の、最初の亥の日を「亥の子(いのこ)の日」と呼びます。
実は、この「亥の子の日」のことを、その月(またはその季節)の最初の亥の日という意味で「初亥」と呼ぶ場合があるのです。
江島神島の初亥祭は11月
例えば、神奈川県藤沢市にある江島神社(えのしまじんじゃ)には、立派な摩利支天様が祀られていますが、ここの「初亥祭」の縁日は11月の最初の亥の日に行われています。
11月の亥の日は、古くから「炉開き(ろびらき)」や「炬燵(こたつ)開き」の日とされ、火の神様への感謝や火災除けを祈る日でもあります。また、「亥の子餅(いのこもち)」を食べて無病息災を祈る風習もあります。
このように、寺社や地域によっては「初亥=11月の亥の子の日」を指して盛大なお祭りを行う場合があるため、参拝に行く際はそのお寺の行事予定を必ず確認することが大切です。
しかし、「年明け最初の亥の日(1月の初亥)」に摩利支天様へお参りすること自体は、どこの寺社であっても非常に縁起が良いことに変わりはありません。お祭りの有無に関わらず、個人的な参拝として2026年1月1日に足を運ぶのは素晴らしいことです。
初亥詣におすすめの神社仏閣
2026年の1月1日、初亥の日に訪れたい、摩利支天様を祀る有名な寺社をご紹介します。
【東京・上野】徳大寺(摩利支天)
アメ横の賑わいの中に鎮座する、通称「下谷摩利支天」。日本三大摩利支天の一つに数えられます。お寺は商店街の上に建っており、まさに活気とエネルギーに満ちた場所です。
初亥の日(特に大祭の日)には多くの参拝者で賑わいます。「気力・体力・財力」を与え、「厄を除き、運を開き、福を招く」ご利益で有名です。
【京都・祇園】建仁寺 禅居庵(ぜんきょあん)
京都最古の禅寺である建仁寺の塔頭の一つ。こちらの摩利支天堂には、7頭のイノシシの上に座る摩利支天像が祀られています。境内にはいたるところに「狛猪(こまいのしし)」が置かれており、亥年生まれの方の守り神としても親しまれています。
京都の初亥と言えばここ、というほど有名で、護摩祈祷なども行われます。
【神奈川・江ノ島】江島神社
日本三大弁財天で有名な江島神社ですが、実は強力な摩利支天様も祀られています。前述の通り、お祭りは11月に行われることが多いですが、初詣スポットとしても大人気ですので、元日の初亥詣には最適です。
まとめ:2026年の幕開けは摩利支天様へ
2026年の初亥の日は、1月1日、元日です。
一年の始まりである元日が、守護と勝利の神様である摩利支天様の縁日「亥の日」と重なることは、私たちにとって大きなチャンスです。
【2026年初亥詣のポイント】
- 日付: 2026年1月1日(祝・木)
- 神様: 摩利支天(まりしてん)
- 御使: 猪(イノシシ)
- ご利益: 護身除災、厄除け、必勝、開運
- 注意点: 11月の「亥の子の日」を初亥と呼ぶ地域もあるので区別する。
摩利支天様は、隠形の術で身を守り、太陽の光で闇を照らす神様です。
2026年という年が、災いを避け、目標に向かって猪突猛進できる素晴らしい一年になるよう、ぜひお近くの摩利支天様へ手を合わせに行ってみてはいかがでしょうか。
「摩利支天を知りその名を念ずる者は、如何なる事象からも害されること無し」
この言葉を胸に、素晴らしい初亥の日をお迎えください。


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